ジャラジャラジャラ とあるマフィアの幹部しか入る事を許されない部屋の中でそんな音がしていた。 部屋の中央には四角い台。 その一辺につき一人が座っている。 ここまでで分かられた方もいるだろうか? そう。麻雀である。 事の起こりは大晦日の大掃除だった。 とは言え、掃除は常にされているので特に大掃除だからといってする必要は無い。 だが、 「障子はねぇ。」 ボスが日本人だという事を考慮したのか何なのか。 数年前、キャバッローネから大量に送りつけられたそれを捨てる訳にも行かず。 わざわざ、改築までして取り付けさせたのである。 「イタリア人には貼り替えは無茶ですからね・・・」 かといって、貼り替えができる人=幹部というこの事実。 幹部がそんな事をしてたら下の者に気を使わせるし、示しがつかない。 「でも、破れたままにはしとけないだろ?」 という訳である。 その事をまだ未成年とは思えないヒットマンに相談したところ 「罰ゲームにでもしたらいいじゃねぇか。」 とかっなり投げやりに答えられ、 「リボーン!真面目に相談してるのに・・・あ、でも考えてみたらいいかも。それ。」 あろうことかボスがそれに乗り、 「あ、じゃ俺最近荷物の整理してたらこれ見つけてさぁ。」 と昔、家族でやったと思しき麻雀セットを片腕が出してきて、 「俺、やったことないんですけど。」 というもう一本の片腕の訴えは黙殺され今の状況に至る。 さて、時間の節約を三分間クッキング並にしてしまって(ぇ 「次がラストゲームだぞ。」 では、これまでの得点を見てみましょう。 「獄寺君、初めてって割りに勝ってるよね。」 「これってやってみたら数学の応用なんですよね。」 勝てないはずだ、と学生時代彼に一度としてテストで勝った事の無い二人は思った。 「リボーン、そんな勝ってた印象無いのに得点トップなんだ・・・」 「数学の応用だからな。」 「「・・・・・・」」 もはや言葉も無い二人である。 「ツナか山本か、負けた方が障子貼りだな。」 そんなこんなでラストゲーム。 「あ、リーチ。」 開始三秒でツナが言った。 「あ、俺もだ。」 何か仕組んだ感があるがそこは無視の方向で。 そして、何巡かして、 「次、俺だな。・・・・・・」 「山本?どうかした?」 「いや?中々揃わないもんだなと思って。」 引いたばかりの牌を捨てる山本。 同じ事をツナもずっと繰り返している。 「あ、だよね。ここまでいってるのに何でだろう?」 「勝負運が無いんだな。」 「ちょ、リボーン!獄寺君まで!」 肩を震わせながら獄寺が 「次、10代目ですよ。」 と言った。 「あ、うん。」 真ん中に積まれた牌を取り、 「あ、ツモ!」 歓声をあげた。 「じゃ、障子貼りは俺かぁ〜。」 あ〜ぁ、と言いながら山本は卓上の牌をかき混ぜた。 「久しぶりにやるとこういうのも面白いな。」 山本が一人ごちながら枠に糊を塗っていると。 「おい、山本。」 後ろから気配も感じさせずに声がした。 「リボーン、手伝ってくれんの?」 「ぬかせ。」 首筋にヒヤリとあたる感触に苦笑いしながら 「冗談だって。で、何か用?」 「さっきの勝負、勝ってただろ。」 それは質問などでは無く確認の響きを帯びており、山本は恍けても無駄だろなと思う。 確かにあの牌を捨てなければ自分が勝っていた。 「だったら?」 開き直った答えに首から銃が離れる。 「お前、後悔した事はないのか?」 突然、全く関係のない事を問われた。 何を、の部分を聞き返さず 「あるよ。」 と言い放った。 背後からは何の反応も返ってこない。 「でもさ、結局何選んでてもそれなりに後悔したと思うんだわ。 だけど、やり直したいとは思った事は無いし。」 「そうか。」 真剣な言葉に返されたのは何の感情も込められない声。 ゴーン、ゴーン、ゴーン・・・ 響き渡る時計の鐘の音。 「年明けか・・・あ。」 後ろを振り向き自分では随分上達したと思うイタリア語で 「Buon anno!」 と呼びかけると死神はニヤリと笑い 「あけましておめでとう。」 と一音ずつはっきり発音してみせた。 まだ、敵わないなぁと思いながら始まった2006年という年。 Tante cose buone a tutti!!星河聖