「Arrivederci」
そう言って少年が引いたピストルの銃声は花火の音に掻き消された。

「やっぱり行かなくていいんれすかね〜。」
車の中で何度目かになる言葉を紡ぐ。
別に誰に向かって言ってる訳でもない。
同乗者が答えない事は分かりきっているし。
実際、行ったりしたら邪魔になるだけだろうし。
あの人が必要ないと言ったからには待つしかないのも分かっている。
つまりは退屈してきただけなのだ。

「ねぇ、柿ピー。骸さん遅いびょん!」
その言葉に初めて反応を見せた同乗者は時間を見ようと携帯を取り出した。

「あ。」
あまり感動が感じられない声に
「なになに柿ピーどしたの?」
と覗きこんだサブディスプレイにあったのは「01/01/SUN」の文字。
「正月じゃん!わー、あけおめ〜!」
窓から上体を出して叫ぶと呆れたようなため息が返ってきた。
「なんなのさ〜、柿ピー」
非難の声をあげると相手する気は無いとばかりに視線を外される。「ちぇ〜。」
「あけましておめでとうございます。」
掛けられた声に慌てて後ろを振り向く。
「骸さん!」
「さっきの音は年明けの花火だったんですね。」
そう言いながら、彼は後部座席に乗り込み、車は速やかに動き出した。
「待たせましたね。」
「んなことないれすよ。」
その言葉に運転席の人がちらりとこちらを見た。
「何れすか。」
機嫌悪そうな声を出しても相手は気にした様子もなくシートベルトを指し示した。
口の中で言葉にならない悪態をつきながら少年はシートベルトに手ん伸ばした。

***

骸はそんな2人のやりとりを見て、口元に小さく笑みを浮かべる。
そのまま視線を段々小さくなっていく館へとやった。
「あけましておめでとうございます。最高の年明けですね。」
クフフと笑いながら再度紡がれた言葉はきっと館で祝いの紅に染まった者達へ掛けられたもの―――。




星河聖