そこは、ダークブラウンと白が基調の、シンプルだが上品な宝飾店で、
ショーウィンドウに陳列されていたペアリングに、オレはどうしようもなく惹かれたのだった。



「なにか、隼人とオレの、ってものがほしいな」
昨夜ことが終わったあと、悪戯っぽいキスの合間にランボはそう言った。形のあるものを残しておきたいとも。オレにとっては部屋にあるものすべてがランボとの大切な共有物だ、と思ったが、照れくさくて口に出来ずに唇を塞いで誤魔化した。
―――― 時計、11時。買出しにでたときはまだランボは寝ていたし、昼までに戻れば問題ないだろう。
オレは、ガラスの扉をくぐって店に入った。


入口からすぐにある楕円形のテーブルには、惜しげもなく溢れんばかりの白百合が飾られていてた。外装からもそうだが中も流石に高そうな造りで、全てがダークブラウンと白で統一されていた。こういう店の雰囲気にはどうも慣れない。不意に、左手に提げたやけに生活感を主張する雑貨屋のビニール袋(そういえば卵が特売だった)がこの場にあまりにもそぐわない事に気付いた。
そうこうしているうちに、営業スマイルを浮かべたいかにも、な女性店員が近寄ってきた。

「お探し物ですか?」
「あぁ、ウィンドウにあったリング、見せて欲しいんだけど」
「マリッジリングですね。おめでとうございます。少々お待ちください」

にっこり微笑まれて思わず笑みを返したが、まさか飾ってあるあのリングがマリッジリングだとは知らなくて…オレはかなり動揺していた。思えばランボに、そういう意味をこめて贈った物なんてひとつもない。なのに最初にして結婚指輪っていうのは、ちょっと凄いことかもしれない。
それでも、『永遠の愛を誓い合うのも悪くないな』と、店員がリングを見せてくれる頃にはガラにも無く、かなり浮かれていた。

「こちらのリングはとてもシンプルなのですが、こうやって2つを合わせると、こちらに十字架ができるデザインになっております。」
1つだと、ただ中央にへこみが入っただけの指輪なのに、2つを合わせると本当に十字架になった。隠し彫りというやつだろうか、対でないと意味を成さないという趣向が気に入った。
「うん、じゃあこれで」
「ありがとうございます。サイズはいかがなさいますか?」
「あ……」
店員ににっこり微笑まれて、その時やっと気付いた。…そういえばランボの指のサイズなんて知らない。
「式に間に合うようでしたら、新婦様をお連れ頂いたほうがよろしいかと…」
「え…いや、ちょっと急いでるんだよな。どうすっかな…」
オレの慌てた様子に、店員はそう言ってきたが、まさかランボをここに連れてくるわけにもいかないし、かと言っていきなり指のサイズを測るわけにもいかない。本人に聞いても自分の指のサイズなんて知らないだろうし。オレの指より細いのは知ってるが。
「でしたら、少し大きめにされて後日お持ちいただければサイズは調節致します。」
「そっか…、じゃあオレの小指くらいので」
「……。女性でそのサイズは少し大きいのでは…」
店員の手を見た。確かに俺の小指がその店員の親指くらいだった。でもランボも一応男だし、いくら華奢でもそこまで細くない筈だ。……多分。
「じゃ、このサイズよりいっこ小さくして」
「はぁ……」
何となく訝しげな表情を浮かべた店員は、でもそれ以上はなにも言わずにリングを包装してくれた。店の内装と同じ白いラッピングにダークブラウンのリボンはかなりセンスが良かった。これをどういうタイミングで渡そうかと考えるとかなり楽しい。店員に会釈して店を出た。



部屋に帰るとランボはまだ眠っていて、オレが何度か揺すぶると、気だるげに上半身を起こした。
「…ただいま。」
ランボの手の上に、さっきの白い箱をのせる。なにこれ、と言いたそうなランボにオレは「いいから開けろ」と呟いた。不思議そうな顔をしながらも、ランボはその箱を受け取る。
リボンをといて箱を開けると、中からビロードの小箱が出てきた。蓋を開けてみると、そこには同じデザインの指輪が2つ入っている。蓋の裏側には「A Happy Wedding」――― 「結婚おめでとう」。

「ね、これ…」
「いいだろ。オレたちのマリッジリング」
ランボの左手を取って、小さいほうの指輪を取り出した。それをランボの薬指に嵌めようとしたが…
「………あれ?」
指輪はすごく大きくて、俺が嵌めてやる前にストン、とランボの指に落ちて、根元で遊んでしまっていた。
「ちょっとおっきくない?コレ…」
「…だな…。クソ…せっかく格好よく決めようと思ったのに……明日、ソレ店で換えてもらおうな」
「ううん。これがいい……」
「なんで」
「だって…隼人がくれた初めてのものだから。隼人も手出して」
ランボが、箱に残っていた大きいほうの指輪を取り出してオレの薬指に嵌める。これで指輪の交換になったね、といって小さく笑った。

「あ、これ、こうやって繋げると十字架になるんだぜ?」
「ホントだ…すごい」
指と指を合わせると、二人だけの十字架ができた。
「誰にも教えちゃ駄目だよ、隼人とオレの秘密。」
いたずらを思いついた子供のように言われて頷くと、こっそりと笑いあう。




「チェーンでも買いに行くか。ネックレスにしても格好いいかもしんねーし…」
「…そだね。」



fin...







ごくらんがわからない…!!!死滅
もうイメージぶち壊しだぜィ。指輪選んでるシーンのがラストシーンより長いですね。
文章の書き方忘れちゃったのかなぁ…


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