なんだって、俺に付き纏ってくるんだ?
イライラすんだよ。お前といると。


驚愕に見開かれた瞳がどうして、と俺に問い掛ける。どうしてそんなひどいことをいうの?
「獄寺さ…」
「呼ぶな」
縋るようなか細い声を突き放すように短く発した言葉は、予想以上に冷たい空気を帯びていて少し驚いた。まるで自分の声ではないような気がして。
でもそれは、その声の発信源は間違いなく自分で。その証拠に、ランボの薄いからだが小刻みに震えている。


「…でも…すきって、俺のこと、」
「……」
「云ってくれた、じゃないですか…?」
「……。」

「……キスだって何回も」
「は?」

思わず嘲笑が漏れた。多分それは自分自身に宛てたもの。

「…本気で愛されてるとでも思ってたか?」
「え…ッ…」
みるみるうちに瞳に水滴が盛り上がっていって、ランボの頬の上、何度も口づけたその場所を滑り落ちた。

「暇つぶしだよ。女抱くのに飽きたときの」
「……寺さん」
「初心な感じでなかなか面白かったぜ。お前」


「獄寺さん!」


「さよならだ。ランボ」



きっぱりと。決別。
これ以上一緒に居ると、きっと。


だめになってしまうから。





「あの……………ありがとう、ございました」

短い間だったけど、嘘でも想ってくれる恋人がいて楽しかったです。
Vi auguro tanta felicita`!


ランボは、確かに微笑っていた。
涙の跡は、くっきりと残っていたけれど。




聞こえなかったふりをして背を向ける。
動揺の滲んだ背中の気配を悟られないように、足早にその場を離れた。




愛していた。愛している。…愛している。今でも。

どんな人間でもランボを失った後の隙間を埋めるには足りないだろう、と。
自分にはランボが必要だと、切実に感じているのに。



独り重い足取りで帰った部屋は、倖せな時間の残り香を纏った、甘美で残酷な空間だった。
きっと俺はここで、思い出の破片を見つけてはそれに囚われる毎日を過ごすのだろう。


鏡を覗き込むと生気を失った男の顔が映っている。

シンクの横にはコップがあり、その中には歯ブラシが2本。
少々ベタではあるが、かつて一緒に生活していた者がいる証だ。
俺は少し迷って思い出の片割れを乱暴に掴むと屑入れに放り込んだ。



熱いシャワーを浴びても後悔は流れてくれるはずもなく、
髪を乾かすのも身体を拭くのさえも程々に、俺はベッドに崩れ落ちた。


今頃になって流れる涙に驚く。
感情なんて、麻痺していると思っていた。


ランボ、ランボ。



何度名前を呼んでも、応えてくれるひとはもう居ない。








「これでよかったんですよね、十代目……」


その独白をきいた者は、いなかった。








獄ランですお久しぶり!
甘いのばっかり書いてたから…お口直し的な、ね  つーかタイトル長ッ
書いてて痛かったでう。ヒィヒィ!こういうの辛い!
ダメなりに感情移入しちゃうもんだから…
堤ソラさんへ捧ぐ。もう二度と会うことはないだろうけど。
獄ランはしあわせいっぱいのがいいです。だってランボがかわいそう。

20051113UP